ACTIVITY活動報告・成果
シンポジウムを開催しました
2024.2.16
2月5日(月)に令和5年度「医療人類学とバーチャル教育を活用した屋根瓦式地域医療教育(濃尾+A)シンポジウム」を開催致しました。
前半の「岐阜大学でのバーチャル教育の取り組みについての発表」では、昨年11月より医学科4-5年生を対象に開始した複合現実デバイス「Microsoft HoloLens」とホログラム模擬患者ソフトを用いた臨床実習の紹介をしました。このようなXR(クロスリアリティ)ツールを導入する利点として遠隔学習が可能であること、スペースや時間の不足などシミュレーション教育を導入する際の障壁に対処できる可能性などが挙げられます。一方で、XR/シミュレーション融合型教育を確立するにあたり、指導者側に求められる XRリテラシーを明らかにしていくことが今後の課題です。そこで前半の講演ではXRが提供する教育ツールの効果、そして指導者側に必要なリテラシーやスキルに焦点を当て、学生と教員側両方から得た事前調査結果を共有し議論を展開しました。
このような岐阜大学でのパイロット的な取り組みを踏まえ、本シンポジウムの主となる基調講演「Reimagining Medical Education in the 21st Century --バーチャル教育が切り拓く新たな医学教育--」が行われました。南フロリダ大学より、世界最大の医療シミュレーションセンターCenter for Advanced Medical Learning and Simulation (CAMLS)のCEO& Executive Director であるDr. Haru Okudaをゲストスピーカーとしてお招きし、この20年間でのシミュレーション教育の導入を含む医学教育改革の取り組みの流れを踏まえ、バーチャル教育ツールが地域医療へもたらす可能性に焦点を当ててお話頂きました。米国で医療の2つの主な課題として挙げられる健康格差と医療砂漠。これらの課題に対して、患者安全・医療安全に加えシミュレーション教育が患者の文化的背景の理解を促す可能性があるという研究結果を含めて、シミュレーション教育導入の有用性・重要性を示唆していただきました。又、都市部と地方での医療従事者を対象にした研修・トレーニング機会の格差は国を超えた共通課題ですが、特にコロナ禍ではトレーニング不足が患者と医療従事者の両方の安全を脅かすリスクにつながることが浮き彫りになりました。医師や医療者の偏在、学習を提供する際の障壁である地方と都市部の距離。これらの課題に対処するためのバーチャル教育ツールを用いた南フロリダ大学での遠隔トレーニングの取り組み・教育効果についての研究の紹介を通し、まだこの分野の研究が新しく限られているかという点が強調されました。オンラインと会場の参加者からは大変活発に質問や意見を頂き、議論が活発に行われました。岐阜&愛知県と米国フロリダ州という地球の裏側に位置する場所ですが、地域医療従事者へクオリティーの高いトレーニングや学習を提供する上でのチャレンジや障壁には共通点が多々見受けられます。フロリダ州で行われている先駆的な取り組みの紹介やSimulation Education ExpertであるDr. Okudaとの議論を通し、思考の糧や今後のコラボレーションのアイディアなどが得られた大変実りの多いシンポジウムとなったように感じます。